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おっと! 人口ピラミッド展特集

世界の人口ピラミッド
その多様性


 世界各国の人口ピラミッドの形状は実にさまざまだが、典型的な形状はおおよそ3つに分けられる。

【1】まさにピラミッドと呼ぶにふさわしく、底部の乳幼児層が最も広がった形状を示す。年齢が増すにつれて量が次第に減少し、富士山のような緩くテントを張ったようなかたちになるタイプ。典型にチャド、ソマリアなどのアフリカの国に多く、アフガニスタンなど中東にもみられる。前世紀半ば、1950年ころの日本もこのタイプであった。


チャド アフガニスタン 1950年の日本

【2】ピラミッドというより、お寺のつり鐘や帽子のようなかたちで、底部の乳幼児層と共に青年・中年層も同様に膨らみをもち、どっしりした印象を示す形状である。典型にメキシコ、インド、イスラエルがある。約30年前のバブル経済時代の日本もこの類の形状にあった。バブルの背景にはその経済をもたらした人口構造の下支えがあったことを示唆している。


メキシコ インド 1989年バブル期の日本

【3】下部の乳幼児、青年層が少なく、成人から高齢者層の中・上部が大きく膨らんでいる形状、蓋付きの壺あるいは紡錘、駒を思わせ、ピラミッドという表現にこだわるなら逆ピラミッドといわざるをえない形状を呈している。典型にイタリア、ギリシア、そして現在の日本が該当する。中国は日本に似ているが中年層が比較的厚く、乳幼児層は増加が認められ人口政策の成果が読み取れる。


イタリア ギリシア 現在の日本
   
中国    

 ほかにこれらいずれともつかないネジのような不思議な形状の人口構造を示す国の例もあるが、それらには総人口が過少なケースやデータ上の不備が推測できる。

 実際の多くの国の人口構造は上記3タイプの混淆した形状を呈し、簡明に分類/整理できるわけではない。展覧会ではそうした世界の国々の多様な人口構造のありようを一瞥して実感するため、3タイプの典型や中間型の特徴的なもののなかから12カ国( アフガニスタン、アゼルバイジャン、中国、デンマーク、フランス、インド、日本、レバノン、メキシコ、チャド、ベトナム、南アフリカ)の構造を3Dプリントで出力し展示した。また、これら以外に地図上、とくに面積が大きな5カ国(アメリカ合衆国、カナダ、ブラジル、オーストラリア、ロシア)と世界全体については2Dプリントで載せた。

 楽屋話だが、もっと数多くの3Dプリントを出力して比較に供したかったが、展示に用いた直径10cm、高さ8cmほどの3Dプリントでも現況のコスト(時間を含む)はまだお手軽なものではなく、今回の展示の狙いとのトレードオフでこのあたりの出力数に落ち着いた。なお、この出力にあたってはWOW株式会社の船津武志氏と佐伯真一氏に全面的にお世話になった。

 これら出力のデータ源は国連のDepartment of Economic and Social Affairs, Population Divisionが公開しているWorld Population Prospectsに基づいている。このウェブサイト(下記参照)では各国、各地域の人口構造2Dグラフ(典型的な人口ピラミッド)を1950年から2100年予測に至るまで年ごとに表示して確認できる。

 また、展示した人口ピラミッドは各国の年齢別の人口構造を国ごとの相対量で造形した。したがって、表出したかたちそのものから国の間での人口数や人口密度の違いは比較できなかった。むろんこれらの違いも比較できるようピラミッドを造形できたが、そうするとどうしても国による人口数や密度の極端な違いに注意が分散してしまい、比較すべきことがらの焦点がぼやけてしまうため避けた。

 国による人口数や密度の違いは別の観点から比較し考えるべきことが多々あるが、それについてはPopulationPyramid.net(下記)がわかりやすいインフォ・グラフィックスを用いて公開している。


・United Nations, Department of Economic and Social Affairs, Population Division, World Population Prospects 2022.
https://population.un.org/wpp/Graphs/DemographicProfiles/Pyramid/900(時節ものなので時間が経つとURLは変化するだろう。適宜調整されたい)

・PopulationPyramid.net. https://www.populationpyramid.net




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