2023年、年の瀬に『おっ,と!人口ピラミッド展:世界の人口ピラミッドと日本の人口逆ピラミッド問題』を新宿の東京ヒルトンのヒルトピア・アートスクエアで開催した。別にわざわざおしゃれなホテルのギャラリーを意図して選んだわけではなかった。そもそもこの展覧会企画を思い立ったこの年の夏に、3ヶ月以上先を想定して会場選びを始めたときに、都内の足の便のよい公共施設のギャラリーから探したが、どこもすでに満杯。書道展や絵画展の需要がいかに高いかを思い知ることとなった。仕方なく民間施設を探すことになるが、これも同類の方々の辿る道、適するところはそう簡単には見つからず、焦るなかでやっと出会ったギャラリーであった。
結果的にはよいめぐり合わせとなり、運営に当たられている福福堂の岡村代表と相川女史にはたいへんお世話になり心地よく無事開催し完了することができた。新宿駅からはすこし離れているがホテルの無料シャトルバスが朝から夜まで使えたし、地下鉄にも直結していた。ホテルアーケードの人通りは想像以上に多めで、通りがかりに展覧会に寄られる方も結構いらした。それでいてアーケードの通り道からは露地入りするかたちになっているため終始静かな環境を保てた。そのようなことで同じような企画を考えている方にはお薦めのギャラリーである。
さて、この小さな展覧会は主として2つの目的で企画し、開催した。ひとつはデータ・アーツ&サイエンシスという学藝の可能性を明確にし、具体例をもってその展望の一助となすことであった。
その具体例に用いたのは世界各国の年齢構成分布の人口データであった。諸国の多様な人口状況を三次元構造体に造形し、それらを比較概観することで新鮮な気づきを得ようと試みた。
また、わが国の人口状況については、現況の出生率ではすぐ先の将来に大きな問題を引き起こすことになる極度の少子化について、今この現在こそが、その解決に向けた意識変革と行動の正念場であるとされるゆえんを一段と明確に捉え、それを広くわたしたちのなかで共有すること、そしてその問題解決の直接の担い手がわたしたち一人ひとりであることをあらためて認識するための機会となすこと、それを少しく藝術的な造形表現によってあらたな構想力の喚起につなげようとすることがもうひとつの目的であった。
日常生活における尺度や量とは、かけ離れたいわゆるビッグ・データが、サイエンスとアートにおける知の綜合化を図る活動をとおして、わたしたち個々の感覚に馴染むかたちで、しかも美的判断も誘うしかたで表現されて身に迫り、そこに観取される問題がまさに生活世界の肌感覚の営みにつながり解決を促す、そうした存在と認識と行為のつながりがこの場との機縁をとおして結ばれることになれば幸いと願ったのであった。